御城プロジェクト:RE Wiki
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討伐武将大兜!藤堂高虎[]

討伐武将大兜!藤堂高虎-前-

藤堂高虎の名を冠する巨大兜の出現――。
緊急の報を伝えに来た、伊予国のとある
城娘と共に、強敵が潜む地へと向かうべし。

前半
――所領。

板島丸串城
う~ん、今日も良い天気だねぇ♪
こんな日は見晴らしの良いところでドカ~ンと一発やっちゃいたい気分だよ!

やくも
ドカーンだろうがカチーンだろうが、どーでもええけど、
間違っても所領内で大砲ぶっ放すのだけは勘弁だに……。

板島丸串城
――ええっ!?
いつもみたいに殿の寝室に向けてぶっ放しちゃダメなの!?

やくも
ダメに決まってるだに!
ていうか、いつもそんなことやってたんがや!?

板島丸串城
あはは、冗談冗談っ♪
本気にしないで、やくもちゃん。

やくも
だにぃ……。
板島丸串城はいっつもそうやってうちを騙すがやぁ。

板島丸串城
だから、ごめんってばぁ。
相手を欺くのは癖ってより私の業だからさ、大目に見てほしいな――

板島丸串城
――って、あれ?

柳川城
はぁ、はぁ…………い、板島丸串城さ~ん!
こんなところにいたのですね……探しちゃいましたよぉ。

板島丸串城
おっ、柳川城ちゃん♪
どうしたの、そんなにハァハァしちゃって?

板島丸串城
あ、もしかして、いつもみたいに、まーた殿といちゃいちゃしてたの?

板島丸串城
もぉ、そういうことは夜だけにしなきゃダメだぞ?

やくも
だに? 殿とむちゃむちゃ?
柳川城、そげな楽しそうなことしとったんか?

柳川城
――い、いちゃいちゃも、むちゃむちゃもしてません!

柳川城
もぉ、板島丸串城さんったら、人聞きの悪いこと言わないでください。
やくもさんが信じてしまったらどうするんですか……。

板島丸串城
わ、悪かったよ……。
だから、そんなふうに本気で悲しそうな顔しないで。

板島丸串城
うーん。これからは少し、嘘つくのは控えないとだね……。

板島丸串城
って、それよりも柳川城ちゃん。
私を探してたようだけど、何か用事でもあったの?

柳川城
あっ、そうでした!
実はですね、板島丸串城さん宛に書状が届いていたのです。

板島丸串城
私に? んー、いったい誰からだろう?
え~っと、どれどれぇ……。

板島丸串城
――っ!?

やくも
板島丸串城……?
急にそげな怖い顔してどうしただに?

板島丸串城
そ、そんな……。

板島丸串城
あの子が、此処に……所領に来るだなんて……。

柳川城
……あの子?

やくも
いったい誰のことがや!?

板島丸串城
細かいことはいいから、すぐに此処から逃げるわよ、二人とも!
書状には『三日後に到着予定でーす』って書いてあるから、今ならまだ間に合うわ!

柳川城
きゃ――っ! ちょ、ちょっと板島丸串城さん!? 
お、お願いですから服を引っ張らないでくださいぃ――っ!

やくも
お、落ち着くだに板島丸串城! 
いったい何がどうしたがや!?

板島丸串城
話はあとっ!! 
とにかく今は、『宇和島城』が来る前に何としてもこの場から――

宇和島城
――はーい、どーもぉ! 私が宇和島城ですよーっ!
お手紙通り! 颯爽と参上しちゃいましたー♪

板島丸串城
な――っ!?

やくも
……だに?

柳川城
え? う、宇和島城……さん?

宇和島城
そうです! 私が板島丸串城の双子の妹――宇和島城です!

やくも
ふ、双子の……?

柳川城
……妹っ!?

宇和島城
はい! 皆さん、どうぞお見知り置きをばっ!

板島丸串城
――こらぁっ! 何が双子の妹よ!!
どうしてあなたって子は、いっつもそうやってドヤ顔気味に嘘つくの!

宇和島城
だってぇ、これが私たち親子の業じゃないですか♪
今日も私の空角の経始(あきかくのなわ)は、ばっちり機能しちゃってますよぉ~!

やくも
お、親子……?

柳川城
あれ? そ、それじゃあ双子の妹というのは……?

宇和島城
――はいっ、嘘です♪

柳川城
…………。

やくも
…………。

板島丸串城
ちょ、ちょっと!
どうして二人ともそんな顔であたしを見るのさ!?

やくも
よく似た親子だなって思っただけだに……。

柳川城
……騙されないように気をつけないとですね。

板島丸串城
うぅぅ……だから会わせたくなかったんだよ……。

板島丸串城
って、そんなことよりも!
宇和島城! あんた、どうして此処に来たのよ!?

宇和島城
あれ? 手紙に書いてませんでしたっけ?

宇和島城
この日の本に溢れる兜すべてを
ドッカーンと一気に殲滅する方法を見つけましたよーって!

柳川城
――ほ、本当ですか!?

板島丸串城
嘘に決まってるでしょ……。
柳川城ちゃん、あんまりこの子を信じちゃだめよ。

宇和島城
くっはーっ! やはりお母さんの前では
すぐに嘘を見破られちゃいますねぇ!

宇和島城
なら、仕方ありません……!
?偽りなしにお願い事をさせていただきましょう!

宇和島城
実はですね――

千狐
――何ですって!
宇和島城さんは、板島丸串城さんと殿の間に生まれた娘っ!?

宇和島城
はいっ♪ 殿は私のお父さんです!

殿
…………。

殿
…………?

柳川城
…………。
(嘘だとわかってても、私……何だか胸がもやもやします……殿……)

板島丸串城
ちょっと! いい加減くだらない嘘はやめなさいって!

板島丸串城
まったく……殿の前で、お母さんにこれ以上恥かかせないでよね。

宇和島城
ええ~、でもぉ!

板島丸串城
口答えしないっ! ほらっ、殿たちに
ちゃんと伝えなきゃいけないことがあるでしょ!

宇和島城
うぅぅ、わかったからお尻叩かないでよぉ……。
腫れちゃったらどうするのさぁ?

殿
…………。

宇和島城
あっ、ご心配なくです、殿!
お母さんにはいつもお仕置きされてますから、これくらいへっちゃらです!

宇和島城
ということで、気を取り直して!

宇和島城
この度、こうして殿の所領にお邪魔させていただいたのは、
ある巨大兜の討伐を手伝ってほしいからなのです!

殿
…………。

宇和島城
はい! お察しの通り、藤堂高虎の名を冠する巨大兜です!

宇和島城
本当なら、私だけで何とかしようと思ったのですが、
敵もなかなか手強くてですね……。

宇和島城
なので、お母さんと仲睦まじいとの噂ありありの殿に、
どうかお手伝い願えないでしょうか――というわけなのです!

殿
…………!

宇和島城
――え!? 本当にいいのですか!?
見返り何も無しで? 手伝ってくださるのですか!?

宇和島城
わーいっ♪ ありがとうございます、殿!
やっぱりうちのお母さんが惚れちゃうだけのことはありますね!

板島丸串城
な――っ!!
い、いきなり何てこと言ってるの、あんたは!

板島丸串城
殿、嘘だからね! 今のはこの子お得意の嘘だから!
いい? 信じちゃ駄目だからね! わかった?

殿
…………!

宇和島城
ま、何はともあれ!
これで殿と一緒に戦えるってことですね!

宇和島城
よーし! それでは皆さん!
準備が出来次第、ドッカーンと出撃しちゃいましょー!

――半刻後。

千狐
転移術は無事成功ですわ!
殿、いつ戦闘になってもおかしくはありません、御注意を!

やくも
って……ちょっと待つだに、殿さん!
向こうの方から誰かが走ってくるがや!

大和郡山城
――よ、よかったぁ……間に合ったのですね、宇和島城ちゃん!
ひとりで兜の相手をするのは大変でしたよぉ……!

宇和島城
お~! 大和郡山城ちゃん!
無事のようで何よりですよー!

板島丸串城
って、ちょっと待ちなさいよ宇和島城!

宇和島城
ん? なーに、お母さん?

板島丸串城
なーに、じゃないでしょ! あんたさらっと流してるけど、
どーして此処に大和郡山城ちゃんがいるわけ!?

宇和島城
それは簡単なことですっ、お母さん!

宇和島城
大和郡山城ちゃんは、私たちと同じく高虎さまに関係する城娘ですからね!
その縁あって、藤堂高虎の名を冠する巨大兜討伐に協力してもらってるというわけです!

板島丸串城
そういうことじゃないっての――!
あたしが言ってるのは、彼女が此処にいるって知ってたのに、
どうして予めそれを教えなかったのよ、ってことよ!

宇和島城
敵を欺くには、まず味方からってやつですね! えへへ♪

板島丸串城
…………。

宇和島城
…………?

板島丸串城
…………あんた。

板島丸串城
この戦いが終わったら……、
真っ赤になるまでお尻叩いてお説教だからね。

宇和島城
やったぁ♪ お尻たたきぃ~♪

宇和島城
って、えええーっ!? 何故ですか!?
私、嘘ついてないのにーっ!!

大和郡山城
あ、あの……私のことなんかでケンカしないでください……。

大和郡山城
というより、既にすぐそこまで巨大兜が来ちゃってますので、
そろそろ戦闘態勢に入っていただかないと危険ですぅ……。

宇和島城
……え!? どこっ!? どこですか、高虎さまを騙る悪党はぁっ!!

柳川城
宇和島城さん、彼処です――!!
殿、警戒を強めてください!

藤堂高虎
…………漸く現レタかと思エバ、
宇和島城と板島丸串城……そして大和郡山城とはナ。

藤堂高虎
某ガ手掛けた城ノ魂ヲ宿セシ者タチは、貴様ラだけではナイ……。

藤堂高虎
今治城よ、大洲城よ……、
ドウシテ我が呼びかけニ応じようトせぬのだ……。

宇和島城
……今治城ちゃんに大洲城ちゃん?
まさか、巨大兜ともあろうモノが城娘に会いたいとでも言うのですか?

藤堂高虎
然リ……某ノ前ニ、縁多き城娘ラヲ連れて来い……。

藤堂高虎
さすれば……今の醜き貴様ラの姿ヲ、
我が手ニよって美シキ器へと改修してやろうではないか……。

板島丸串城
改修って……。

板島丸串城
あんた、まだそんなこと言ってるのね――っ!

藤堂高虎
…………。

板島丸串城
あんたは、かつて私を改修しようとしたけど、
この子にまでそんなことしようっていうなら、ただじゃおかないわよ!

宇和島城
おおっ、見事な見えきりです、お母さん!
何だかいつもより三倍くらいカッコイイですよ!

藤堂高虎
母……?

藤堂高虎
板島丸串城……貴様が母ダト……?

藤堂高虎
ククク……フハハハハハッ!
コレハまた、何とも珍妙なモノよなぁッ!!

藤堂高虎
ならば、某ハ父ダトデもイウつモリカ?

宇和島城
うぇぇ……ちょっと姿形的に、
アレをお父さんとして敬愛するのは敷居が高いですねぇ……。

板島丸串城
ばか言ってないで、あんたもさっさと戦う準備しなさい!
あの巨大兜……相当強いわよ!

宇和島城
そこはご安心を――!!

宇和島城
だってこっちには、巨大兜の弱点を知り尽くした
とってもつよ~い大和郡山城ちゃんがいるのですから!

大和郡山城
ええっ!? そ、そんなこといつ言いましたっけ、私っ!?

柳川城
…………宇和島城さん。
もしかして、また――

宇和島城
――はいっ! 嘘です♪

宇和島城
でも、私やお母さんだけでなく、
柳川城さんに大和郡山城ちゃんもいるのですから、
あんなヤツに負けるわけありません!

宇和島城
ということで、皆さんと力を合わせて、
わるーい巨大兜を討伐しちゃいましょう!

宇和島城
さぁ、ドッカーンといきますよぉ!!

後半
藤堂高虎

……ぐっ、ヌ…………!!

宇和島城
おおっ! あからさまな苦悶の呻きが出ましたよ、殿!
このまま一気にトドメといきましょうか!

殿
…………!

宇和島城
やいっ、巨大兜!
高虎さまの名を冠するわりには大したことないですね!

藤堂高虎
高虎ノ名ヲ冠する……巨大兜……。

藤堂高虎
ソウダ……良く理解シテイルデハないか、宇和島城!

藤堂高虎
ならば、ソレがドウイウ意味を持つか、
いま此処で教えてヤロウではないか!

宇和島城
……え?

藤堂高虎
瘴気展開――ッ!
我が名に縁在る城娘ノ心身ヲ……今コソ掌握センッ!!


討伐武将大兜!藤堂高虎-後-

突如として放たれた瘴気が宇和島城の心身を襲う。
敵方へついてしまった愛娘を目の当たりにし、
母である板島丸串城は、或る行動に打って出る。

前半
藤堂高虎

瘴気展開――ッ!
我が名に縁在る城娘ノ心身ヲ……今コソ掌握センッ!!

宇和島城
ええーっ!?
ここにきて瘴気とかアリなんですかぁ!!

板島丸串城
まずい……!
殿、何とかしないとあの子が操られちゃうわ!

大和郡山城
お任せください、板島丸串城さん!
私の力で瘴気を防いでみせます! はぁ――っ!!


――ソウハサセルカ!
高虎様ノ邪魔ハサセナイゾ!

兜軍団
油断シテ、ボクラ桃形ガイルコトヲ忘レテイタナ!

兜軍団
鋭ッ、鋭ッ、鋭ッ――容赦無ク城娘ヲ突キ殺セッ!

大和郡山城
きゃぁ――っ!? そ、そんな……不意打ちだなんて……!
うっ、ぁぁ……これでは、法術が使えないですぅ!

柳川城
宇和島城さん! 逃げてください!
このままでは瘴気によって、敵の手に堕ちてしまいます!

藤堂高虎
コノママデハ……だと? 愚かな――ッ!
既に此奴ハ我が支配下ニアル! 見るがイイ、殿ヨッ!

殿
…………!

宇和島城
……フフ、ウフフフ。

宇和島城
高虎サマ……あの男ヲ粉々に爆砕しちゃえばイイんですね♪

千狐
そ、そんな……!

やくも
……どっからどう見ても巨大兜さんに操られてしまってるだにぃ!!

板島丸串城
……宇和島城。

宇和島城
…………エヘヘ♪ ちゃーんと見ててクダサイね、お母さん!
悪いヤツは、みーんな私がドッカンドッカンぶち殺しちゃいますヨ~♪

板島丸串城
…………。

板島丸串城
そう……あなたがそういうつもりなら、私も付き合ってあげるわ!

柳川城
い、いけません板島丸串城さん!
いくらなんでも、親子同士で大砲を打ち合うなんてダメですよ!

板島丸串城
いいから、あなたは黙ってみてなさい!
これは親と子にしかわからないことなんだから!

柳川城
で、でも……。

殿
…………!

藤堂高虎
フフ、殿ヨ……今さら怖気づいても遅イワ……。
宇和島城、貴様の一撃ヲ盛大に見舞ってヤれッ!

宇和島城
御意にございマス、高虎サマ!

宇和島城
てことで、お母さん!
ど派手にドッカーンといきますよぉ!

板島丸串城
言われなくても、こっちだって遠慮無しにやってやるわ!

発射ぁ!! ――板島丸串城たちの叫びと共に、轟音が戦場に生じる。

そして、勢い良く放たれた二つの砲撃は、
迷い無く巨大兜へと向かい、不意を突くようにして着弾したのだった。

藤堂高虎
――グハァァァアッ!?
ば、バカな……なぜ、某ニ砲弾ガ……!?

藤堂高虎
宇和島城……ま、マサカ貴様ァ、瘴気に操ラレていたのは――

宇和島城
――はいっ♪ 嘘です!

柳川城
こ、これは……一体何がどうなっているのですか……?

千狐
宇和島城さんは、藤堂高虎と縁在る城娘ゆえ、
あの巨大兜が放つ瘴気の効果は避けがたいはずなのに……。

板島丸串城
そうね、確かにその通りだわ、千狐ちゃん。

板島丸串城
でもね、あたしら親子だってバカじゃないの。

板島丸串城
過去にあたしが操られてから今まで、再びこういう日が来るだろうと見越して、
あの子には、宇和島の牛鬼にまつわる伝承の力を加護として付与していたのよ。

宇和島城
四賢侯仲間の福井城ちゃんや高知城ちゃん、鹿児島城ちゃんにも
色々と対策を練って貰いましたからね、後でちゃんとお礼しないと!

宇和島城
とはいえ、まさかここまで上手くいくとは思いませんでした!
正直なところ、片腹痛しのぷっぷくぷーって感じですね、お母さん♪

板島丸串城
調子に乗ってる暇があるなら、さっさと次弾の装填準備をしなさい!
そろそろ、あの巨大兜も本気でくる頃合いよっ!

柳川城
すごい……かつての戦いと苦心を糧として、最良の結果を示すなんて……。

柳川城
私も、負けてはいられません!
殿、この勢いに乗り、兜らを討ち果たしましょう!

大和郡山城
わ、私も……ちょっと怖いですけど、まだまだ頑張りますからね!

殿
…………!

藤堂高虎
己が城ニ此処までノ恥辱を与エラレルトハ……。
ヤハリ、貴様ラニハ早急な改修が必要のようだな……。

藤堂高虎
いいだろう……此処で貴様ラを打ち倒し、
この藤堂高虎ガ全てヲ造り替エテヤロウデハナイカッ!!

千狐
殿、巨大兜が再び攻めてきます!
出陣のご準備を――!!

後半
藤堂高虎

……ば、バカな……何故、斯様な事態に陥らねばナラヌのだ?
某ハ高虎……藤堂高虎ナノダゾ――ッ!?

宇和島城
そーですねー、宿した魂はわりかし似てますが、
どこまでいっても真実になれない嘘なのでぇ、

宇和島城
そんなんじゃ、だーれも騙せませんよ?

藤堂高虎
だ、黙レ……某ハ築城ノ神……高虎、ナノダ……!
某コソガ、貴様ラを支配スルニ相応しい器だと知れッ!!

板島丸串城
何が支配よ! 
いい加減、その妄言だらけの口を閉じなさい!

藤堂高虎
――グ、ぅぅあっ……!
板島丸串城……宇和島城……何故だ、何故……なの、ダ……!

藤堂高虎
某ハ……某ハァァッ……ゥヴァァアァァァアアアアアッ!!

柳川城
――っ!?

千狐
なに、これ……!?
急激に巨大兜の霊気が……膨れあがっている……!?

やくも
けど、何だか苦しげな感じだに!?

宇和島城
ってことは、いよいよトドメをさす好機ってことですね!
お母さん、一緒にドッカーンと始末しちゃいましょう♪

板島丸串城
そうね。容赦はいらないわ。
最後も派手に爆砕するわよ!

宇和島城
ではではぁ、宇和島城いっきまーっす!!

宇和島城の声音と共に、再びの砲撃が放たれる――

――はずだった。

???
シュゥゥゥウウゥウ……シュルルゥゥゥゥウルゥゥゥ…………。
其処マデにシテもらおうか、宇和島城……板島丸串城。

宇和島城
くふぁ――っ!? ……な、なに、これ……? 
どうして私……やられちゃってるのですか……?

板島丸串城
攻撃が、まったく見えなかった……。
それに……ヤツは、いったい……?

千狐
あ、あれは……!?

柳川城
加藤清正の名を冠する……巨大兜!?

大和郡山城
加藤清正――!?
ど、どうしてこんなところに……?

やくも
きっと仲間を助けに来たに違いないだに!!

加藤清正
助ケル……?
成程、確かにソウ捉えるコトも出来よう。

加藤清正
だが……そうさな。ある意味デハ、
殺シニ来たと言えるのかもシレヌ……。

宇和島城
こ、殺しに……来た……?

殿
…………!

加藤清正
殿…………。

加藤清正
然様な顔をスルな……。

加藤清正
意思に関わらず……孰れ(いずれ)マタ、我らハ相見えるダろう……。
……ソレマデニ、より強大な力を体得シテおくが良い……。

千狐
…………。

千狐
巨大兜……撤退していきます。
追撃はどう考えても難しそうですね……。

柳川城
……まさか、巨大兜が巨大兜を助けるなんて。

やくも
あの二人、そげに仲がいいんかや?

大和郡山城
そういう感じはしませんでしたが……。
うーん。巨大兜の生態は未だ謎が多いですね。

板島丸串城
そ、それよりも……そろそろ所領に戻らない?
……あたしはいいけど、この子が心配だわ。

宇和島城
あはは……親子揃ってお恥ずかしい限りですぅ……。

宇和島城
――なぁんて!

宇和島城
実はこの怪我も、嘘です♪

板島丸串城
ちょ、ちょっと……本当に大丈夫なの?
無理してるんじゃないでしょうね?

宇和島城
無理でも嘘でも、お母さんを心配させたくはありませんからね!
いつだって私は元気な姿でいたいのです!

宇和島城
それはそうと、殿!
今回のご助力、誠に感謝です!

宇和島城
私と大和郡山城ちゃんは、今回のことを
高虎さまに縁在る城娘たちに伝えに行かねばならないので、
ちょっとばかし性急ですが、これにて失礼します!

大和郡山城
……え? ええ!?
私も行くのですか? き、聞いてないですよぉ!

宇和島城
いいからいいから! 一緒に行きましょうよぉ~! 
今回のお礼も兼ねて、何か美味しいものオゴっちゃいますよぉー!

大和郡山城
な、何か美味しいもの……っ!?

大和郡山城
そ、それじゃあ私……甘味処に行きたいです!

宇和島城
了解です! 私のとっておきのお店を紹介しちゃいますよー!

宇和島城
ということで、殿! 
またお目にかかりましょう!

宇和島城
今度会うときは、今日のお礼も兼ねて、
色々とお手伝いさせてもらいますからね♪

殿
…………。

殿
…………!

宇和島城
はい! お互い身体には気をつけましょうね!

宇和島城
では――っ! さらばです、殿! 
そして、我が愛しのお母様っ♪

板島丸串城
何がお母様、よ……まったく。
最後の最後までふざけきってるんだから。

柳川城
……な、何だか嵐のように過ぎ去っていきましたね。

やくも
でも、あの豪快さは嫌いじゃないだに!

殿
…………!

千狐
それでは、殿。
所領へと帰還しましょう。此度の遠征、誠にお疲れさまでした。

――数刻後・某所。

加藤清正
…………。

藤堂高虎
いい加減、離サヌカ清正……。
……疾うに冷静さハ取り戻シテおる。

加藤清正
なら良いが……。
……シカシ、コレカラどうするつもりだ?

加藤清正
最早、貴様ノチカラでは、名に宿る縁ニ因って
城娘を支配スルことは難儀トなっているのが実情……。

藤堂高虎
知れたコト……。

藤堂高虎
支配できぬのなら……某ガ創り上げるマデよ……。

加藤清正
……貴様。

藤堂高虎
…………。

加藤清正
…………ソウカ。
意は決してオルというわけか。

藤堂高虎
……頃合い。

藤堂高虎
ソウ……此の世界にオケル
我が在り様を変えるには、現在ガ正に頃合いナノだ……。

加藤清正
『ヤツ』も、既に武神降臨ノ儀によって、己が器ニ死を宿らせておる故……。

加藤清正
是デ……更に刻ハ加速するデアロウな……。

藤堂高虎
…………アア。

藤堂高虎
なれば…………往コウ、清正。
我等ガ宿願を果たすタメにも――

加藤清正
――此の歩みは止められヌ、か……。

ぽつりと零れた奇妙な声音を契機とし、二体の異形は、
深き闇の中へと、その器を溶け込ませていくのだった――。


討伐武将大兜!藤堂高虎-絶-

藤堂高虎の名を冠する巨大兜との戦から数日後――。
殿たちは、伊予国の城娘らと共に、来たるべき強敵
との戦に向け、演習を行う運びとなったのだが……。

前半
――早朝・所領。

殿
…………。

大洲城
おはようございます、お殿様♪

大洲城
今日の朝餉は私が準備をさせていただきましたので、
お顔を洗ってスッキリしたら、皆さんと共に召し上がってくださいね。

殿
…………。

殿
…………?

大洲城
……え? 誰だ――って、もう忘れてしまったのですか?

大洲城
私ですよ、私。伊予国の城娘、大洲城です!

殿
…………。

殿
…………!

大洲城
ふふっ、やはり起床直後の寝ぼけた状態であっても、
宇和島城ちゃんのように騙すことはできないみたいですね。

大洲城
先ほどの無礼をお許しください、お殿様。
今日は故あって、貴方様のもとへと参じた次第です。

大洲城
ちなみに、既にお気づきかもしれませんが、
今日突然ここに来てしまったのは、私だけじゃないんですよ?

殿
…………!?

今治城
やっほー、殿。急にお邪魔しちゃってごめんね。

今治城
……って、アタシのことは流石に覚えてるよね?

殿
…………。

殿
…………!

今治城
そうそう。日本三大海城の今治城――

今治城
――って、そこまでちゃんと覚えててくれてたなんて嬉しいなぁ♪

殿
…………?

今治城
あっ、えっとね、今日こうして会いに来たのは、
何も遊ぶためとかじゃなくて、ちゃんとした理由があるの。

今治城
聞けば、殿たちは数日前に
藤堂高虎の名を冠する巨大兜と戦ったんでしょ?

今治城
知ってるとは思うけど、アタシも大洲城も藤堂高虎とは
浅からぬ縁があってさ……。

今治城
だから、その巨大兜に対する
今後の諸々について色々と話し合いたいなって思ったの。

今治城
ってわけだからさ、アタシたちの他にも
高虎に関係する城娘たちを一緒に連れてきちゃったんだけど、
入室させちゃってもいいかな?

殿
…………。

殿
…………!

今治城
ありがとね、殿。

今治城
それじゃあ入っておいで、江戸城ちゃん!

殿
…………。

殿
――ッ!?

江戸城(?)
はーい、どーもぉ!
お初にお目にかかります、私が噂の江戸城ちゃんですよぉー!

殿
……。

殿
…………!

宇和島城
はいっ、今回もやっぱり嘘ですっ!
どっからどー見ても宇和島城ちゃんですもんね! ドッカーン♪

大和郡山城
ちょ、ちょっと……今治城ちゃんも宇和島城ちゃんも
おふざけが過ぎますよぉ。

大和郡山城
これは流石にお殿様だって怒るに決まって――。

殿
…………!

宇和島城
こいつぁ騙されたぜチクショー、って感じに笑ってくれてますよ!
やりましたね、今治城ちゃん! 連携大成功ですっ!

今治城
あはは、ごめんね殿。
宇和島城ちゃんがどーしてもやりたいって言うからさ。

殿
…………!

大和郡山城
うぅぅ、度量が大きすぎるのも考え物ですよぉ、お殿様ぁ……。

大洲城
ですが、これだけ起き抜けにぞろぞろと城娘が
来訪しても全く動じないあたり、お噂以上の胆力をお持ちのようですね。

板島丸串城
あったり前でしょ?
何せあたしが認めた殿なんだから。

宇和島城
ああっ! お母さ~ん♪
よかったぁ! 生きてたのですねー!

板島丸串城
勝手に殺すんじゃないわよ!
っていうか、このまえ会ったばっかでしょーが!

宇和島城
でも、巨大兜との戦闘中、
結構な勢いで大破してたから、もしかしたらと思って!

板島丸串城
だったら、もう少し心配しなさいよっ!

今治城
……まったく、アンタら親子は相変わらずだね。

今治城
どう、元気してた板島丸串城?

板島丸串城
まぁね。今治城も大洲城も特に変わりないようで安心したわ。

板島丸串城
……で、あんたらがわざわざ此処に来たってことは、
単なる話し合いだけで済ませるつもりは無いんでしょ?

今治城
まぁねー。

今治城
ってことでさ、殿。
話し合いという名の親睦会は今夜やるとして――。

今治城
ちょっとばかし、アタシらのワガママに付き合ってくれたりしないかな?

殿
…………?

――戌ノ刻・伊予国。

柳川城
あ、あの……殿。
これは一体どういうことなのでしょうか?

殿
…………。

今治城
ごめんね、柳川城ちゃん。
急に演習したいとか言い出しちゃってさ。

大洲城
ですがこれも、今後の巨大兜との戦いにおいて必要なこと……。

大洲城
宇和島城さんから聞いた話では、
高虎様の名を騙る巨大兜の様子は異常そのものだった上に、

大洲城
かつての力を遙かに越えるほどの
凶悪さを備えていたというではありませんか!

大和郡山城
殿も柳川城さんもわかっていることだとは思いますが、
兜たちは日増しに強くなっています……。

大和郡山城
ですから、その……あまり戦うことは好きではありませんが、
私たちは今よりももっと強くならなくてはいけないのです!

宇和島城
まぁ、簡単に言えば、
みんなで特訓して城娘としての力を増強させちゃいましょー!

宇和島城
って、そういうことですよね、お母さん?

板島丸串城
有り体に言えばね……。

板島丸串城
殿、今治城たちのいきなりの誘いは
あんまり褒められたものじゃないけどさ、
あたしたちに時間が無いのも事実なんだ。

板島丸串城
悪いけど、伊予国の城娘たちを強くするためだと思って、
今回の演習に協力してくれないかな?

殿
…………。

殿
…………!

大洲城
ありがとうございます、お殿様。

大洲城
今日のご助力に対しては、
此の後の饗応(きょうおう)にて、しっかりとお礼をいたしますからね?

宇和島城
おぉ~!? ってことは、今宵は大洲城ちゃんお得意の
鮑と栗と若布を使ったお料理でおもてなしだねー!

大洲城
うーん、二点ほどぶっぶーですね、宇和島城さん。

宇和島城
はぇ?

大洲城
いいですか、宇和島城さん?
まず私は一部の食材に対してでなく、料理全般が得意なのです♪

大洲城
それと、宇和島城さんが言いたかったのは
若布ではなく昆布ではないでしょうか?

宇和島城
あー、そうだったかもです!

柳川城
打ち鮑(うちあわび)、搗栗(かちぐり)、昆布――なるほど、
出陣する際において縁起の良い食べ物ということですね。

宇和島城
打って、勝って、喜んぶー! ってなわけで、殿ぉ! 
伊予国の城娘の実力、とくとご照覧あれですよー!

殿
…………!

柳川城
殿、我々も出陣と参りましょう!
演習と言えど、手加減できる相手ではありませんよ!

後半
大洲城

あたた……こ、これがお殿様たちの実力なのですね……。

大和郡山城
うぅぅ……わ、わかってはいましたが……さすがはお殿様ですぅ……。

宇和島城
う~ん、おっかしいなぁ……。
……空角の経始はちゃんと機能してたはずなのに……。

板島丸串城
あんたは、相手を騙すことに注力しすぎなのよ!

板島丸串城
……って、あたしも人のこと言えないけどね……。

柳川城
はぁ……はぁ……な、何とか勝つことができたみたいですね、殿。

殿
…………!

今治城
いやぁ、実に見事な戦いぶりだったね、殿。
まさかここまで圧倒されるとは思ってなかったよ。

柳川城
…………。
(とは言いつつも、今治城さんはまだまだ余力がある様子……)

柳川城
(演習ということで、大洲城さんも手加減していたようですし、
……もし全力で攻められていたら、負けていたのは此方だったかもしれませんね)

柳川城
(私も、もっと強くならねば――!)

殿
…………!

今治城
うん! それじゃあ、今日の所は此処までにしよっか!

今治城
ほら、みんなも変身解除して、所領に戻るよー!

宇和島城
はーい♪
所領に戻ったら、いよいよお待ちかねの宴会ですね?

大和郡山城
いっぱい動いてお腹ぺこぺこですからね、
今日は甘い物いっぱい食べたいですぅ!

板島丸串城
あたしは大洲城ちゃんが作るものなら何でも来いだよー!

大洲城
それでは、ここぞとばかりに腕をふるうしかありませんね♪

大洲城
ということで、殿。柳川城さん。
今宵は楽しみにしていてくださいね?

殿
…………。

殿
…………!

柳川城
それでは殿、皆さんと共に所領へ帰還するとしましょう!

――子の刻・所領。

大洲城
今治城さーん? 何処ですかぁ?

今治城
……おっ? どうしたの大洲城ちゃん?

大洲城
どうしたの、ではありません!

大洲城
せっかくお殿様や所領内の皆さんとの宴の最中だというのに、
なぜ急に席を立たれたのですか?

今治城
……うーん。ちょっと酔っちゃったからかなぁ。

大洲城
…………。

今治城
…………。

大洲城
宇和島さんの嘘すら見破る私に、
そんな言い訳が通じると本気でお思いで?

今治城
……まさか。

今治城
…………。

今治城
実を言うとさ、ちょっと不安になっちゃったんだ。

大洲城
……巨大兜のこと、ですか?

今治城
うん……。

今治城
大洲城ちゃんも宇和島城ちゃんから聞いたでしょ?
藤堂高虎の名を冠する巨大兜の一件を……。

大洲城
……ええ。
もう一体の巨大兜が現れて、窮地を救ったという話ですが。

大洲城
それが、どうしても気にかかるのですか?

今治城
起きてしまった事の成り行きよりも、
行動に出た巨大兜の名が……ね。

大洲城
確か……加藤清正、だったでしょうか?

今治城
そう……。

今治城
そして……清正が駆け付ける前後の時点における高虎の言動……。

今治城
……それらから察するに……。

今治城
次に、高虎と対峙する時……、
今の殿たちの力では、勝つことは難しいかもしれない。

今治城
……それは、大洲城ちゃんだって感じたでしょ?

大洲城
そう、ですね……。

大洲城
…………。

大洲城
とはいえ、そうした悲観は現在に対してのみにございます。

大洲城
今後、お殿様たちが辿るであろう成長の途次を考えれば、
そこまで暗き思考を巡らせる必要はないのでは……?

今治城
……というと?

大洲城
柳川城さん――彼女が殿の御側にいる限り、
このままで終わるということは決して無いと、私は思います。

今治城
……柳川城ちゃん、か。

今治城
今日、彼女と戦ってみてわかったよ。

今治城
何て言うか、底が知れない……。
……大洲城ちゃんとは別の不気味さがある城娘だったよ。

大洲城
心外ですねぇ。
私のどこが不気味だというのですか?

今治城
だって、大洲城ちゃん……今日わざと負けたでしょ?

大洲城
それは今治城さんだって同じことでしょう?

今治城
さぁ……どうだろうね。

今治城
でも、大洲城ちゃんが其処まで自信を持って心配ないって言うなら、
今はそれを信じて前進するのみ……って感じか。

大洲城
ええ、それが良いかと。
未来を嘆く者に、明日の勝利を掴めるとは思えませんものね。

大洲城
それでは、戻るとしましょう、今治城さん。お殿様たちがお待ちです。
……まだまだ色々と聞きたいことがあるとのことですよ?

今治城
やれやれ、しょうがないなぁ、殿は。

今治城
まぁ、明日にはまた、伊予国で兜討伐やら防衛やらが待ってるからね、
今宵くらいは何も考えずに、羽を伸ばすとしよーか。

大洲城
でしたら、私も最後までお付き合いいたしますよ、今治城さん♪

そうして、微笑と共に差し出された大洲城の嫋やか(たおやか)な手を取ると、
今治城は、殿たちの待つ広間へと再び戻って行くのだった――。

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