御城プロジェクト:RE Wiki
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第39話 粋狂の焔 ~大和~[]

北条氏康の名を冠する巨大兜を倒した殿たちの許に、
神娘に導かれた大和の城娘が期せずして現れた――。
此の出会いが、殿一行を新たな戦いへと駆り立てる。

前半
北条氏康の名を冠する巨大兜の戦いから多くの時が経過していた。

千代城
…………。

千代城
(日に日に兜たちの邪気が強くなっているのを感じる……)

千代城
(抑止力――同胞からそう形容されていた、
あの不可思議な巨大兜を討伐した意味を、
他の城娘たちはどれだけ理解しているのだろうか?)

滝山城
これはまた、ずいぶんと怖い顔をしているな、千代ちゃん。

千代城
――だから千代ちゃん言うなっ!

滝山城
何故じゃ? 可愛いと思うがのぅ?

千代城
……悪いが、巫山戯に構っている場合ではない。
おぬしも、既に此世の異常さを理解しているのじゃろう?

滝山城
然り……。北条氏康の名を冠する巨大兜は、
確かに抑止力として、此世に対し機能していたようじゃが、

滝山城
まさか、兜だけに対してだけでなく、我ら城娘――いや、
殿の記憶や心奥にまで作用し始めてるとは思わなんだ……。

千代城
多世の懸隔、経験の非連続、心魂の無秩序……。
それらの曖昧化に歯止めが効かなくなってきておるというわけじゃ。

滝山城
しかし、だからこそ終焉を手繰り寄せることもできるというもの。
……少なくとも、あの城娘は運命に抗おうとしておるのは間違いない。

千代城
故に……わらわたちも成すべきことを成そうぞ。
柳川城ひとりが苦しむ様は、見るのも感ずるのも、もはや忍びない。

滝山城
うむ……。ならば先ずは我々の故郷の守護を万全とせんがため、
東北・関東に縁深き城娘をそれぞれ引き連れて防衛にあたるとするのじゃ。

――そうして、千代城たちは所領を離れ、
各々の故郷における兜との戦いに力を注ぎ始める。

畿内某所・夜――。

そんな千代城たちと同じ様に、此の地においてもまた、
三人の城娘が兜の軍勢を前に苛烈な戦を繰り広げていた。

兜軍団
進軍セヨ……進軍セヨ……!
……人間ヲ……城娘ヲ……殺シ尽クセ……!

雑賀城
……後陣から新手の到来を確認。
まったく……倒しても倒してもキリがないな。

多聞山城
数日前から各地で兜たちの動きが一段と
活性化しているという報に間違いはなかったようですね。

龍王山城
殿一行が北条氏康の名を冠する兜を倒したことを機として、
此世は新たな段階へと進み始めた……というわけじゃな。

龍王山城
とはいえ、何度繰り返そうと、どれだけの時を経ようと、
雲霞の勢を以って押し寄せるだけの戦術しか取れぬとは――

龍王山城
――やはり兜の戦は醜いのう。
いいかげん飽き飽きしてきたのじゃ。

雑賀城
龍王山城……美醜で戦を語る暇があるなら、
一体でも多く、雑魚どもを倒してくれないか?

龍王山城
ぬかせ雑賀……先刻からぬしの数倍は敵を屠っておるわ。

龍王山城
その証拠に、見よ……兜たちの焼かれていく様を!
わらわの焔に抱かれ闇夜に滅びの美しさを晒しておるわ。

雑賀城
(悪趣味な……)

雑賀城
(これも、嘗ての城主の影響というわけか……)

雑賀城
だが、それだけ無駄口が叩けるならまだいけるな。
……多聞山城も、問題ないか?

多聞山城
無論……この程度、
姉様の相手をすることに比べれば児戯同然ですわ。

龍王山城
これっ、多聞山城!
無闇にあの爆殺狂の話をするでない!

龍王山城
わらわは、ぬしのことは好きじゃが、彼奴は気に食わぬ!

雑賀城
同族嫌悪ってやつか……。

龍王山城
……何じゃと? 
雑賀、もういっぺん言ってみよ。

雑賀城
……いいから黙って兜を焼き払え、龍王山城。

雑賀城
キミだって多聞山城から報酬をもらうんだろ? 
……金額分はきっちりと働きなよ。

龍王山城
金額分……じゃと? 

龍王山城
ふっ、ぬしのような無粋者と一緒にするでないわ。
わらわは無報酬で多聞山城に協力しておるのじゃ。

雑賀城
……冗談だろ?
だったら何の得があってこんな戦いをしてる?

龍王山城
そこにわらわの求める美があるからじゃ!

雑賀城
…………。

雑賀城
信貴山城も大概だが……キミも充分に狂ってるな。

龍王山城
じゃーかーらー! 彼奴の話はするなと言っておるじゃろーがっ!

龍王山城
粋狂……そう! わらわのは信貴山城とは異なる「粋」じゃ!

龍王山城
面白きもの、美しきものが在るならば、
如何な地、如何な敵であろうと戦ってみせようぞ!

多聞山城
……言いましたね、龍王山城?

龍王山城
え……? ど、どうしたのじゃ、多聞山城? 
急に怖い笑みを浮かべよって……何だか怖いのじゃ。

多聞山城
貴方の詞を機とし……かねてより案じておりました策を、
今こそ展開する時と見定めたまでですよ……ふふふ。

龍王山城
かねてより案じていた……じゃと?

多聞山城
ええ。その通りです、龍王山城……。

――そして美しき微笑と共に、
多聞山城は龍王山城にそっと耳打ちする。

龍王山城
……なるほど、な。

龍王山城
畿内における兜の大規模討伐……、
而して、ヤツを誘き寄せるということか。

多聞山城
理解が早くて助かりますわ。
……では、さっそく取りかかっていただけますね?

龍王山城
ああ。ぬしの願いとあれば、喜んで聞き入れてやろうぞ。

雑賀城
多聞山城……。
まさか、龍王山城と殿を会わせるつもりか?

多聞山城
はい……。彼女の力と業を考慮すれば、
此刻、此世においては龍王山城が最も適役かと。

雑賀城
そう、か……。

雑賀城
……キミがそこまで言うなら、勝手にすればいい。
ボクは報酬さえもらえればそれで構わないからね……。

龍王山城
そういうことじゃ雑賀。ぬしに雑魚どもは任せ、
わらわは一足先に戦線を離脱するとしようかのぅ。

龍王山城
……っと、そもそもじゃが、
殿の所領とは何処にあるのじゃ?

龍王山城
わらわは、ぬしらと違って場所を知らぬのじゃが……。

ツバサ
――それなら大丈夫だよ♪
ツバサが案内してあげるからー!

龍王山城
……。

龍王山城
なぁ、多聞山城よ……。
まさかとは思うが、ツバサとわらわで殿の許へ迎えと?

多聞山城
ええ、そうですが……何か?

龍王山城
はぁ……いや、何となくそんな気はしておったのじゃ……。
まったく、子守をしながらの途次かと思うと泣けてくるのぉ。

ツバサ
子守ぃ? どーゆーことぉ?
ツバサは子供じゃなくて神娘のひとりだよぉ?

多聞山城
貴方は何も心配しなくていいですわ、ツバサ。
万事つつがなく……美しい策を咲かせてください。

ツバサ
うん、分かったよぉ多聞ちゃん♪
しぎーちゃんのためにも、ツバサ頑張るからね!

ツバサ
それじゃあ龍王ちゃん!
ツバサの手を握ってくれるー?

龍王山城
……う、うむ。

ツバサ
それじゃあ……、

ツバサ
秘技……時空転移術だよぉ――っ!!

溌溂とした声音と共に清浄な光が生じると、
ツバサと龍王山城の姿は多聞山城たちの前から一瞬にして消えてしまった。

多聞山城
…………頼みましたよ、龍王山城。

雑賀城
いや、それよりも兜の相手……。
いい加減ボクだけに任せるの止めてくれないかな?

多聞山城
あら、ごめんなさい。雑賀城。

多聞山城
それでは、怠けていた分……しっかりと暴れさせていただきますわ!

――翌朝。

ツバサ
りゅーおーちゃーん! こっちこっちー! 
殿たちが生活してる所領はここだよー!

龍王山城
ま、待たぬかツバサ……はぁ、はぁ……。
少しはわらわの歩調を考慮せい……!

龍王山城
まったく……ツバサの転移術は毎度のことながら
意図した場所からかなり離れた所に飛ぶから余計に疲れるわぃ。

龍王山城
……っと、あれは?

千狐
――っ!?

千狐
あ、貴方は……!

龍王山城
ああ待て待て、そう身構えんでもよい。
わらわは大和の城娘、龍王山城といって怪しいものでは――

千狐
――ツバサなのぉ! 
すっごくすっごく久しぶりなのぉー!!

ツバサ
千狐おねえちゃーんっ♪
ようやく会えたねーっ!!

龍王山城
こらーっ! わらわを無視するでないわー!

やくも
だにぃ……千狐ぉ、朝っぱらから何を騒いでるがや?

ツバサ
わーっ、やくもちゃんもいるー!
久しぶりだねー! 元気してたー?

やくも
だにぃっ!? な、何でツバサが此処にいるがや!?

龍王山城
じゃーかーらー! わらわを無視するなと言っておろーにっ!

龍王山城
いい加減にせんと、さすがのわらわも泣くぞ! 
……いいのか? いいんじゃな!? うわーんじゃぞ!?

千狐
も、申し訳ありません……龍王山城さん。
神娘の同胞との再会に喜ぶあまり我を忘れてしまいましたわ……。

千狐
それよりも、どうして城娘の貴方とツバサが一緒に?

龍王山城
それが、話せば長くなるのじゃが……。

殿
…………。

龍王山城
――というわけじゃ!

龍王山城
まぁ簡単に言えば、多聞山城ら姉妹が、
少し前にこの神娘のひとり――ツバサと出会ったことを契機として、
畿内に存する町娘らを次々と城娘として覚醒させたというわけじゃ。

龍王山城
……といっても、もともとあるべき身体に、
城娘としての魂を還してやったというだけのことじゃが、

龍王山城
……まさか信貴山城によって、
わらわが目覚めさせられるとは何とも口惜しい話じゃ。

ツバサ
でも、こーして城娘として殿に会えたんだから
ツバサは良いことだって思うなー!

千狐
まったく、ツバサったら。
千狐の知らないところでまさかそんなことをしていたなんて……。

千狐
ちゃんと状況報告は書状でこまめにするようにって約束していたのに、
どうして言いつけを守らなかったの?

ツバサ
千狐お姉ちゃんたちをビックリさせたかったからーっ!

やくも
ツバサは相変わらずだに……。

千狐
はぁ……これじゃあ、やくもと大差ないわね。

やくも
ど、どういう意味だに!?
うちはツバサよりかはしっかりしてるつもりだにぃ!

柳川城
まぁまぁ……やくもさん、落ち着いてください。

三崎城
ええ、私と一緒にマグロを食べて、がっつりと落ち着いちゃいましょう♪

やくも
……いや、さっき朝餉食ったばっかりやけん、マグロは勘弁だに。

三崎城
そんなぁ……せっかく捌いてきたというのにぃ……しくしく。

柳川城
……と、それよりも龍王山城さん。先ほどの話ですが、
やはり各地における兜の動きの活性化は間違いないのですね?

龍王山城
うむ。雑兵級の兜は言うに及ばず、
旧知の城娘らによれば、今までに見たこともないような
凶悪な巨大兜が、諸処で目撃されておるとのことじゃ。

千狐
……千代城さんや滝山城さんたちも、
今はそれぞれに自国の防衛へ専念しているようですし、

千狐
やはり、あの巨大兜が言っていたことは本当だったのですね。

三崎城
北条氏康の名を冠する巨大兜……。

柳川城
そして、ヤツを倒した直後に現れた、あの不気味な巨大兜……。

龍王山城
その話ならば、知り合いの城娘たちから
ある程度のことは聞いておる……。

龍王山城
北条氏康の名を冠する巨大兜を倒したことで、
ぬしらが現状の兜の動きを引き起こしたそうではないか。

殿
…………。

龍王山城
勘違いするな、殿よ。
わらわは別に責めているわけではない……。

龍王山城
むしろ、よくやったと言いたいくらいじゃ!

三崎城
よくやった……?
あの、どういうことなのでしょうか?

龍王山城
ぬしらのおかげで、強大な力を持つ兜が動き始めたということは、
いよいよ、兜らの総大将と対峙できる可能性が出てきたということだからじゃよ。

千狐
兜らの総大将――!?
ですが、未だに関ヶ原一帯に張られた結界は強固なのですよ?

龍王山城
ああ、アレか。

龍王山城
わらわたちも、あの結界に関してはつぶさに観察しておるが、
そもそもあの中に兜は本当に存在するのじゃろうか?

千狐
……え?

龍王山城
多聞山城の話によれば、どうやらぬしらは関ヶ原の地に
巨大兜を束ねる者がいると見込んでいるようじゃが……、

龍王山城
そう思わせること自体が兜の策だとしたらどうする?

千狐
……そ、それは。

柳川城
無いとは言い切れませんが、でも……。

龍王山城
よいよい、そう簡単にぬしらの意識を変革することなど望んでおらぬ。

龍王山城
(それに、わらわも割とてきとーに言葉を発しておるしな……ふふふ)

龍王山城
が、しかし……現にぬしらは関ヶ原へ注意を向けるあまり、
各地の兜らの動きや畿内に渦巻く凶悪な気に対する意識が浅くなっている。

龍王山城
一途さは美に通ずるひとつの要素とはいえ、
時としてあるべき柔軟性を奪い、醜さを生み出すものでもある。

三崎城
ですが、畿内に凶悪な霊気を備える存在がいるといいますが、
龍王山城さんはそれが兜らの総大将だと思うのですか?

龍王山城
別に、わらわだけの考えではないのじゃ。

龍王山城
これは、畿内周辺で戦う城娘ら全員の考えと言っても過言ではない。

龍王山城
いいか? わらわたちが守護する地にて顕現する巨大兜――しかも、
それが比類無き凶悪さを備えているといえば、該当する魂は自ずと限られよう。

殿
…………。

殿
…………!?

龍王山城
そうじゃ……畿内が一国には山城国があり、そして――

龍王山城
――本能寺の変の舞台ともなった地がある。

殿
…………!?

龍王山城
うむ……殿の言う通り、

龍王山城
ヤツの名を――織田信長の名を冠する巨大兜の霊気を、
わらわたち畿内の城娘たちの何人かは感じ取っておる。

柳川城
織田信長――っ!?

千狐
いつかは、その名を冠する巨大兜が現れるとは思っていましたが……。

三崎城
それが本当だとすれば、龍王山城さんたちが、
兜らの総大将として考えるのも頷けます……。

三崎城
だって、模倣されし魂であろうと……織田信長は、
全ての兜を束ねるに余りある格を有する名ですからね。

やくも
なるほどだに……。

やくも
(うぅぅ……ぜんぜん話についていけてないけん、相づちしか打てんだにぃ……)

殿
…………?

龍王山城
そうじゃ。すでに畿内周辺に存在する城娘らは
織田信長の名を冠する巨大兜を討たんと、行動に出始めている。

柳川城
だからこそ、我々の許へと参じ、
畿内における兜討伐への協力を願い出た……ということですね?

龍王山城
然りじゃ、柳川城よ。

龍王山城
じゃが、織田信長の名を冠する巨大兜は実に用心深く、
未だにその足取りを掴ませてはくれぬ……。

龍王山城
故に、わらわたちは畿内における雑魚兜すべてを掃討する!

龍王山城
それも出来るだけ派手に! 美しく! 過激にじゃ!

龍王山城
さすればわらわたちの動きを見過ごせなくなった
織田信長が現れざるを得なくなるという算段よ!

三崎城
な、なんとも豪快な策ですね……。

龍王山城
じゃが、粋な策じゃろう?

殿
…………。

千狐
殿、如何なさいますか?

殿
…………。

殿
…………!

柳川城
そうですね、このまま各地に戦力を分散させて防衛を続けるよりも、
龍王山城さんと共に、畿内における兜討伐へと打って出ましょう!

龍王山城
そうかそうか、うむ良き返事じゃ!
ぬしらならそう言ってくれると思っておったぞ!

龍王山城
それでは早速出立するとしようかのぅ。
ほれ、ツバサ。ぬしも用意せい!

龍王山城
――って、あれ?

ツバサ
……すぅ、すぅ…………。

やくも
寝とるだに……。

千狐
此処に龍王山城さんを導くために、未熟ながらも
頑張って転移術を使ったみたいですから……今は休ませてあげましょう。

三崎城
それで、まずは何処へ向かえばいいのでしょうか?

龍王山城
そうじゃなぁ、多聞山城たちといきなり合流するのもありじゃが、
それだと美しくもなければ、粋でもないしぃ……。

龍王山城
とりあえずは、大和の地にはびこる兜どもを掃討するとしようかの。
彼処はわらわにとっても、多聞山城にとっても縁のある地ゆえな。

千狐
承知いたしました。
それでは、殿。準備ができ次第、出立しましょう!

こうして新たな兜討伐の遠征は幕を開けたのだった――。

――数刻後・大和国。

千狐
えっと……龍王山城さんの記憶と智を媒とすることで、
何とか転移術は成功したようなのですがぁ……。


…………殺ス……殺ス…………。

兜軍団
人間ヲ……城娘ヲ……全テ滅セヨ……。

やくも
とんでもない数の兜さんたちで溢れかえってるだに。

柳川城
畿内の状勢がまさか斯様なまでに悪化しているだなんて……。

三崎城
殿、急ぎ兜たちを討伐すべく出陣しましょう!

三崎城
……って、ちょ、ちょっと龍王山城さん!?
これから戦だっていうのに変身しなくていいのですか?

龍王山城
はて……?
ぬしは何を言っておるのじゃ?

龍王山城
斯様なところで、わらわは戦わぬぞ!

三崎城
――えっ!? ど、どど、どうしてですか?

三崎城
あっ!? もしかして、
私たちをこんな危険な地におびき寄せるだけおびき寄せて、
兜たちに討ち取らせちゃおうとかって企んでたり――!?

龍王山城
たわけ! いくら松永久秀と縁ある城娘だからといって、
わらわを信貴山城と一緒にするでないわ!

龍王山城
よいか、殿。
此の地においてわらわは戦に手を貸さぬ。

龍王山城
それもこれも、ぬしらの力を見極めるため……。
よいな? わらわをがっかりさせてくれるなよ?

殿
…………。

殿
…………!

三崎城
そういうことならば、三崎城も全力で戦いに臨みますっ!
殿には、危ないところを助けてもらった恩がありますからね!

三崎城
ということで、柳川城さん!
一緒に出陣しちゃいましょう――っ!!

後半
龍王山城

ふふ、実に見事な戦であったぞ、殿よ。

龍王山城
多聞山城が見込むだけのことはある……。
興奮して思わず変身してしまったのじゃ♪

三崎城
はぅぅ……変身までしたのなら、途中からでも加勢してくれればよかったのにぃ……。

龍王山城
馬鹿者! 実力を見定めるためなのじゃから、
戦いの最中にわらわが手を貸したら意味がなかろう。

龍王山城
それに見よ、三崎城。
ぬしと違って柳川城の方はまだまだ余力があるようじゃぞ?

柳川城
……え? そ、そんなことありませんよ。
私だって、無我夢中で戦っていましたから……。

柳川城
(それに……まだまだ、この程度で満足なんてできません。
私たちには、倒さなければいけない強敵が待っているのですから……)

龍王山城
…………。

龍王山城
柳川城よ。何という顔をしておるのじゃ。

柳川城
……え?

龍王山城
戦に勝利したというのに、眉間にしわなど寄せよって。
……せっかくの美しい顔が台無しじゃ。

龍王山城
ぬしは、殿と一番付き合いの長い従者じゃと聞いておる。
それ故に、責任を人一倍感じているのは分かるが、

龍王山城
余裕を失ってまで力を求めたところで、
得られるものなどたかがしれておる。

龍王山城
もう少しくらいは仲間を信じてみたらどうじゃ?

柳川城
……私は別に……そんなつもりは……。

三崎城
……さ、先ほどまで私たちが必死になって戦っていたのを
楽しげに眺めていただけの人が言う台詞ではないと思いますが……。

龍王山城
はっはっは♪
三崎城よ、ぬしもなかなか言うではないか!

龍王山城
とはいえ、じゃ!
柳川城の不安は分からんでもない!

龍王山城
ぬしの戦ぶりは我が審美眼に適うものだったゆえ、
褒美と言ってはなんじゃが、わらわが柳川城の不安を取り除いてしんぜよう。

柳川城
……え?

龍王山城
ぬしの不安は力を求めるがあまりに生まれる闇じゃ。

龍王山城
ならば、より強き仲間を得ることで、少しは
心安らかに笑みを湛えることが出来るということじゃろう?

柳川城
そ、そういうものでしょうか……?

龍王山城
そういうものじゃよ、柳川城。

龍王山城
では、新たな仲間を得んがため、次なる地へと向かおうではないか。

三崎城
って、どこへ行けばいいのですかぁ?

龍王山城
河内の地にわらわの知り合いがおる。
まぁ、彼奴はあまり戦事は好きではないが……、

龍王山城
そんなことをほざいている城娘などごまんといるからのう、
無理矢理にでも仲間に引き込むとしよう。

三崎城
……そ、それはちょっとかわいそうですよぉ。
せめて新鮮なマグロを手土産にですねぇ――

龍王山城
――冗談じゃよ冗談。すでに話はついておる!
わらわたちが会いに行けば仲間となることを快諾してくれるはずじゃ。

殿
…………!

千狐
それでは、殿。
龍王山城さんのお知り合いと会うため、さっそく河内へと向かいましょう!

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